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特別寄稿 松田清男さん

令和2年6月30日

プロフィール
1930年生まれ。41年間の教員生活を経て、1990年11月に
故郷・樽石に樽石大学を開校。
樽石の自然の中で、飲み・食い・歌い・語らいながら、
「生きる喜び」「心の宝物」は何かを訪れた人に問いかける。
その人柄と樽石の自然に魅せられた学生は全国に370人。

 「心の宝もの」

私は、41年間の義務教育の教員生活を終え、平成2年3月に定年退職した。その間、3万時間余の授業をしたことになるが、中でも忘れられない小学校6年生の道徳の1時間がある。物を大切にする心を育てる授業だった。それをここに再現してみる。

まず、授業の事前調査として、子供たちの宝もの調べを行ない、その展示会を開いた。宝ものは、次のようなものだった。賞状、カセット、犬のぬいぐるみ、貯金箱、記念切手、ラジコン、オルガン、古い本、父母、仏壇、友だち、頑張る心、旅行の思い出、など…展示・披露を通して、宝ものには展示できるものと、展示できない心の中にあるものとがあるんだということを理解させた。そこで、いよいよ
「祖父からもらった私の宝もの」の授業となった。

私の祖父は、明治13年生まれ、宮城農学校獣医科卒の獣医師だった。日露戦争に従軍した陸軍獣医中尉でもある。
児童らに祖父の宝ものとして、従軍した時に使った将校行李(こうり)と、中に入っていた軍服(平服と礼服)や鳥の羽の付いた軍帽などを見せた。次に心に残っている宝ものの説話をした。

昭和の初めは、家畜による農耕が主流でどこの家にも牛や馬がいた。農繁期など獣医の仕事は特に多忙で、一日数回の往診などは普通だった。自転車が売り出されると、祖父はいち早く購入して往診に利用した。そして、祖父は、往診から帰るとすぐに自転車を磨いた。一日に何回となく往診するが、その度にピカピカに磨き上げた。自転車を逆さまにし、タイヤやフレーム、スポークを一本一本布切れできれいに掃除した。

子供たちにこの話をした後、「なぜ、先生のおじいさんはそんなに自転車を大事にし掃除したんだろう」と考えさせた。一人は「高いお金をだして買った自転車だから」と答え、また「いつでもピカピカにした自転車に乗れるように掃除したのだと思う」「いつまでも長持ちするように大事にした」などの返答が続いた。

そこで私は、祖父から聞いたことを子供だちに話した。
夏の暑い日、往診から帰ると、祖父は孫の私にいった。
「自転車乗って行って来た俺でさえこんなに暑かったんだから、俺に乗られた自転車はなんぼか暑かったべと思って、掃除するんだよ」。
みぞれの降る初冬の日は、
「自転車に乗った俺でさえこんなに冷たかったんだから、おれに乗られた自転車は、なんぼか冷たかったべと思うと掃除しないでいられないんだよ」と……。

子供たちは、予想だにしなかった祖父の話に、ただ黙として言葉がなかった。自転車と会話のできる世界。自転車をいつくしむ姿を思い描きながら感動にひたっている様子だった。授業者の私も声が詰まりそうになった。この授業は、私がしているのではなく、祖父がしているのだとさえ思えた。

私は在職中、窓ガラスを壊した子供には、いつもガラス窓におわびをさせた。
「ガラス窓、何と言ってたっけ」
と聞くと、子供は
「『危ないから今度から気をつけろ。ふざけたりするな』と言っていました」
というのだ。ガラス窓と会話できない子には、会話できるまで何回でもおわびにやらせた。自分と自分の対話の世界を持てる人間を、幼い時から育てたかった。

「自己対話」の世界は、宗教の領域でもあると思う。
私は現在、地域の生涯学習の場として、志を同じくする仲間と「樽石大学」を主宰している。物資が万能だと錯覚するような風潮の昨今だ。金では買えないすばらしい心の宝ものを、孫たちの世代に残してやりたいと思う。

私が祖父からそうしてもらったように………。

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